新型肺炎がもたらす経済への悪影響が、アジアだけでなく欧米でも意識され始めた。中国だけでなく世界各地で増え続ける感染者。いつまでどこまで広がるのか見通せず、幅広い打撃を与えている。
株価の急落を受け、財務省と日本銀行、金融庁は25日に幹部会合を開いた。武内良樹財務官は会合後、「市場のボラティリティー(変動しやすさ)が高まるなか、引き続き市場動向を緊張をもって見守っていく」と記者団に述べた。
24日のアジア市場から始まった株安の流れは欧州や米国を経て、3連休明けの25日の東京株式市場でも1千円超の大幅安になった。
中国の影響大、迫られる景気対策
これまで新型肺炎の影響で中国などアジア株は下落していたが、今回は欧米市場も大幅に下げた。特に米ダウ工業株平均は、好調な米経済を背景に今月中旬に史上最高値を更新するなど、底堅さが目立っていた。
しかし、中国を中心とした製品供給網(サプライチェーン)への依存度が高い米メーカーなどを中心に、24日の株価は大きく値下がり。中国を生産拠点とする米アップルが前週末比4・8%、昨秋に上海でテスト生産を始めたばかりで中国の部品メーカーに大きく依存する電気自動車メーカーのテスラも同7・5%、それぞれ下落した。
中国東部に進出する米国企業などでつくる上海米国商会が17日に出した調査結果(109社が回答)によると、中国で操業を再開できなくなった結果、48%の企業がすでに世界の事業展開に影響が出たと答えた。具体的な対策は、61%の企業が工場再開を待つと答えた一方、30%の企業が中国以外に生産を移管すると答えた。米企業にもじわりと影響が広がっている。
株安連鎖の引き金を引いたのは、イタリアやイランなどで感染が拡大し、欧米経済にも悪影響が及ぶとの警戒感だ。野村総合研究所の木内登英氏は「米国株式市場を中心にあったこれまでの行き過ぎた楽観論に対し、中国以外の日本や韓国、欧州など周辺国に感染が拡大している状況から、米国など世界経済への影響が市場の従来の見方では済まないとの懸念が出てきた」と話す。
これまでは、米国への影響は限定的との見方もあった。11月に大統領選を控えるトランプ米大統領自身が、肺炎について「4月には終わる」「万事うまくいっている」などと楽観的な姿勢を示し続けてきた。米株式市場の急落を受けた24日も、ツイッターで「ウイルスは米国では非常にうまく抑制できている。株式市場の見通しも私にはとてもいい感じにみえる」と投稿。消費者の不安を打ち消そうと必死だ。
ただ、足元では世界的な新型肺炎拡大を受け、各国は景気下支えのための対応策を迫られている。
新興国では2月以降、インドネシアやタイ、ロシアなどの中央銀行が相次いで利下げに踏み切った。市場では米連邦準備制度理事会(FRB)も利下げに動くとの観測が急速に強まっている。これまでは21年に入るまで政策金利を据え置くとの見方もあったが、米CMEグループの調査によると、20年内にさらに2回の利下げを見込む予測が最も有力となり、3割超の確率を占める。木内氏は「(24日の米市場の株価の下落は)FRBに緩和の可能性という言葉を引き出す、『催促相場』ともいえるだろう」とみる。
AP通信によると、トランプ政権は感染対策として急きょ、25億ドル(約2800億円)の予算措置を求める方針だ。野党民主党議員からは「不十分」との批判も上がっており、新型肺炎の悪影響を封じ込めることは、トランプ氏にとって最も重要な政策課題となりつつある。(青山直篤=ボストン、福田直之=北京、湯地正裕)
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February 26, 2020 at 05:00AM
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